この記事は FMC Advent Calendar 2020 の19日目の記事です。
18日目は port さんの「FMC Advent Calendar 2020 18日目」でした。
20日目はほかさんの「FMC Advent Calendar 2020, 20日め」です。

たむそんです。
今年の FMC Advent Calendar も多くの方に参加していただき嬉しく思います。 特にうえしゅうさんをはじめとする宣伝に協力してくれたみなさん、ありがとうございました。

近況報告しますと FMC をやっております。以上。

準備

以下の記事を前提知識とします。

どれも長い文章なので読むのが大変だと思います (僕自身全てを精読しているわけではありません)。
各テクニックごとに関連する部分 (もしくは上記以外の記事) をお伝えするので、分からないことがあるときだけ確認すればいいと思います。

標準配色 (U, D, R, L, F, B) = (白, 黄, 赤, 橙, 緑, 青) を使用します。

回転記号以外に以下の記号を使用します。

  • X (Y) Z
  • NISS を意味します 。
    X, Y, Z を確認するときは、スクランブルを Sc として完成状態からそれぞれ Sc X, X' Sc' Y, Y' Sc X Z と回します。
    この記号は FMCer にとって一般的なものです。
    (cf.「最少手数競技入門 第三版 by Sebastiano Tronto」3.2.3 NISS)

  • X*
  • X または X' という意味です。
    CubeRoot で使われていたのである程度一般的な記号だと思います。

  • [X, Y]
  • X Y または Y X という意味です。
    うえしゅうさんが使っていた記号を自分なりに使いやすくしたものなので、使用する場合は注意してください。

解答

スクランブルはページ下部に固定してあります。

L (D R) // EO (3/3)
D (B' U2 F' D2 F2 D') // DR (7/10)
(F') U2 L2 B' U2 B' // HTR (6/16)
[1] R2 B2 R2 D2 // 3E (4/20)
[1] = B' F D2 B F' R2 // finish (6-4/22)

Solution:
L D U2 L2 B' U2 B2 F D2 B' F' R2 D2 F D F2 D2 F U2 B R' D' (22)

思考過程

EO

少なくとも日本では FMC の EO というと、「エッジの向きそのもの」、「エッジの向きが反転したパーツ」、「エッジの向きを直す手順」のどれかを指します。どの意味かは文脈で判断してください。
(cf.「最少手数競技入門 第三版 by Sebastiano Tronto」2.5 EOから始めよ (Starting with EO))

僕は普段試技を開始したら、キューブをノーマル・インバーススクランブルで崩し、それぞれから4手以下の EO を探します。
EO を探している間は NISS EO を含め頭の中で判断し、キューブを回すことはありません。
(cf.「最少手数競技入門 第三版 by Sebastiano Tronto」3.4 EO中のNISS利用 (Using NISS during EO) )

トップ層は EO を見つける度にキューブを回して先を探す人が多いようですが、 僕は探索速度が遅く、全ての軸を見れないことがあるので先にまとめて EO を探しています。

見つけた EO は以下の通りです。末尾の * は省略しています。

B2 [U2, L2] F, B2 [D2, R2] B, F2 [U2, L2] B, F2 [D2, R2] F, (F' R D2 F), (F' D' R F), L' B' L, L (D R), (L' D' L), D' R' D

FB 軸は通常通り4手以下の EO を探しましたが、RL 軸を見たとき僕の探索速度では調べきれない程の4手 EO が見つかりそうだと思い、以降は3手以下に絞って探しました。

L (D R) をどうやってキューブを回さずに見つけたか補足をします。
まず、ノーマルから RL 軸の EO が反転しているパーツを探すと UL, DB の2つが見つかるので L* で EO を4個にします。
L* したとき EO が反転しているパーツの "色" は赤白、赤緑、赤青、黄緑になります。
これらのパーツはスイッチ後 EO が反転したまま RU, RF, RB, DF に移動することが分かるので、頭の中で考えて (D R*) をメモしました。
(cf.「最少手数競技入門 第三版 by Sebastiano Tronto」3.1 逆スクランブル(Inverse Scramble))

ちなみに EO が2個以下である確率は約3.27%なので結構ラッキーなスクランブルだったと思います。
(cf.「EOLine」)

DR

他に3手以下の EO が見つからなかったので、 DR を探します。
(cf.「DRを使おう(前編)」DRとは)

DR は基本的に以下の流れで作ります。

  1. EO (すでに完成)
  2. DR-XeYc
  3. DR trigger へのセットアップ
  4. DR trigger

(cf.「DRを使おう(前編)」DRまでの道筋)

僕はまず、スイッチせずに回せる EO から DR-XeYc を探します。見つけた DR-XeYc のうち短い手数で DR を作れそうなものだけをメモします。 短い手数で DR を作れるかどうかの判断は経験によるもので言語化が難しいです。
3手以下の EO から DR-XeYc を探し終わった時点で15分も経っていませんでした。 いつもより少し早いですが、後でスイッチありの EO にも時間を取りたかったので DR trigger へのセットアップと DR trigger を探し始めます。
DR trigger は考えることがほぼないのでセットアップと一緒にメモします。

以下の解答では DR-XeYc、DR trigger へのセットアップ、DR trigger の切れ目にそれぞれハイフンを挿入します。
これは今回の記事が初心者に読まれていることを想定しているからであり、 DR に慣れれば基本的に回転記号の見た目で切れ目が分かるので通常このような書き方はしません。
末尾の * は省略しています。

D' R' D ルート

B R' - B2 F2 U2 F' - R B2 R // DR (9/12)

試技中は CF までの手順が難しいと思いスルーしました。
(cf.「DRを使おう(後編) 」Corner First)

今見返すと AUF を除いて7手の形だったので保険にしておくべきでした。

(L' D' L) ルート

(U' F' - B2 L2 U2 D - B) // DR (7/10)
(F' D - F2 B2 R2 F - U F' U) // DR (9/12)

一つ目の DR は CF 手順が難しいのでスルーしました。

二つ目の DR の CF 手順も難しかったのですが、ブロッキーだったのでメモに印をつけました。

スイッチせずに回せる3手 EO を調べ終わった後、ブロッキーな DR から BB を試みましたが上手くいきませんでした。
(cf.「DRを使おう(後編) 」Block Building)

L (D R) ルート

D - (B' U2 F' D2 F2 - D) // DR (7/10)

D* で DR-4e4c にしてスイッチ後を読みました。
このとき僕は位置のあってないエッジの移動先と向きのあってないコーナーの FB 面色の移動先だけを読んでいます。

CF 手順はそんなに簡単ではありませんが、ブロッキーだったのでスケルトンまで探すことにしました。
(cf.「最少手数競技入門 第三版 by Sebastiano Tronto」2.2 よいスケルトンを見つけよう(Find a Good Skeleton))

ちなみに2020年時点で mo3 AsB を (たぶん) 持っている Kyeongmin Choi は、 スイッチ後の移動先を読まず DR-XeYc からスイッチして実際に回して調べているようです。
(cf.「21 move (almost) full fmc attempt」)

どうしてスイッチ後を読まない方がいいのか僕もワカラナイ。

skeleton

NISS EO で DR を見つけたらそのままスケルトンを探します。

L (D R) // EO (3/3)
D (B' U2 F' D2 F2 D') // DR (7/10)

(F' R2 U2 L2 F' U2 F) // HTR (7/17)
(F') U2 L2 B' U2 B // HTR (6/16) [Sk1]

[Sk1] B2 R2 B2 R2 D2 // 3E (= 中段エッジの3点交換) (5-1/20)

DR 後 (F*) すると HTR-2e4c になりました。
(cf.「DRを使おう(後編) 」HTR)

そのまま HTR を作りましたが、bad だったのでスイッチして新たに HTR を作りました。
ちなみに (F') でスイッチしたのは (F) よりペアが多かったからです。

HTR を作った後は B2 R2 で青-白橙の 122 ブロックを作ったら流れでスケルトンができました。
この時点で40分手前です。

insertions

通常ならもう少し DR を探しますが、個人的にかなりいいスケルトンだったのでそのままインサートします。
(cf.「DRで使うエッジ手順まとめ」)

この記事ではスケルトンを書き下しますが、試技中は今まで書いたメモをそのまま使ってインサートしています。

Skeleton:
L D U2 L2 [1] B' U2 B' [2] R2 B2 R2 D2 F D F2 D2 F U2 B R' D' (20)

[1] = L2 B F' D2 F B' // rejected solution (6-3/23)

[2] = B' F D2 B F' R2 // first solution (6-4/22)

First Solution:
L D U2 L2 B' U2 B2 F D2 B' F' R2 D2 F D F2 D2 F U2 B R' D' (22)

中段エッジのみの交換なのでスライスだけでも交換できそうですが、すぐには見つからなかったのでとりあえずコミュテータをインサートしました。
(cf.「DRを使おう(後編) 」Slice Insertion)
2つのコミュテータを見つけて単純に手数の短い [2] を採用しました。

スライスできそうな見た目の解答ですが、とりあえず他の DR を探します。
他の3手 EO をスイッチして探しましたが、何も見つかりませんでした。
Rkid さんや kzy さんが採用していた7手 DR は見逃していました。

残り10分でスライスを探し始め21手の解答を見つけたのですが、残り30秒になっており書き下す時間がなかったため22手の解答を最終解答としました。

時間外

時間内に書き下せなかった解答です。

First Solution:
L D U2 L2 B' [ex1] U2 [B2 F D2 B' F' R2 D2 F] D F2 D2 F U2 B R' D' (22)

[B2 F D2 B' F' R2 D2 F] = F' U2 B' F' [ex2] L2 U2 B2 F' // repalace (-8+8/22)
[ex1] = S, [ex2] = S' // finish (4-5/21)

Solution:
L D U2 L2 F' L2 F' L2 B2 L2 U2 B2 F' D F2 D2 F U2 B R' D' (21)

B2 F や B' F' に注目してスライスを探しましたが見つからず、リプレイスを考えてみました。
リプレイスとは解答を置き換えるテクニックです。
完成状態のキューブに対し、[B2 F D2 B' F' R2 D2 F] を逆側から回したものを直感で解きなおします。
頻繁に使えるテクニックでもないので、系統だった説明はできません (一応「DR Guide」の 5.4.1 Replace and Improve で説明はされていますが、曖昧に感じます)。

スライスは2層回しと捉える人もいますが、僕は記号通り中層を回す方が考えやすいです。

実際のメモ

末尾の * は省略して次のステップの頭に180度回転を加えることで X' を表現しています。

NISS を多用し、トップ層のセオリーとずれてる探索方法だったと思います。しかし、運よく個人的に上出来な結果を残せてよかったです (21手が間に合わなかった悔いはありますが)。
探索方法はまだ模索中のものですが何かの参考になれば幸いです。

FMC Advent Calendar 2020 は23日目も僕が担当します。
この記事で使ったテクニックは知られているものとして、スクランブル (2) の思考過程を簡潔に書く予定なのでよろしくお願いします。

23日目の記事を公開しました。
FMC 24 moves (FMC Advent Calendar 2020 (2)) 思考過程

Scramble (1)

R' U' F R2 U R2 U F2 L2 D' R2 U B2 U' L' U F' L R2 D' F' L' R D' R' U' F